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東京家庭裁判所 昭和43年(家イ)2343号 審判

申立人 清良賢(仮名)

相手方 張栄花(仮名) 外一名

相手方清恭媛特別代理人 山野美弥子(仮名)

主文

相手方張栄花と相手方清恭媛との間に親子関係の存在しないことを確認する。

理由

一、申立人は主文と同旨の審判を求め、その事由として述べる要旨は、

(一)  相手方清恭媛(以下「相手方恭媛」と略記する。)は、韓国人である申立人とその妻である相手方張栄花(以下「相手方栄花」と略記する。)との間に一九六三年(昭和三八年)七月二五日出生の嫡出子として韓国の戸籍に登載されているが、真実は申立人と日本人である相手方恭媛特別代理人山野美弥子(以下「相手方恭媛特別代理人」と略記する。)との間に昭和四〇年七月二〇日出生した非嫡出子である。

(二)  申立人は、相手方栄花と昭和二七年ごろ事実上の夫婦となり、一九六五年(昭和四〇年)八月二〇日婚姻届を了し、その間に二児が出生し、それぞれ韓国の戸籍にその旨登載されているが、申立人は相手方恭媛特別代理人と昭和三八年ごろから婚姻外の関係を生じ、その結果、相手方恭媛特別代理人は、申立人の子として昭和四〇年七月二〇日相手方恭媛を出生したものである。そして、相手方恭媛は、日本名を恭子と命名されて昭和四〇年八月二日相手方恭媛特別代理人の非嫡出子として出生届がなされ、ついで同年八月一六日申立人によつて認知されている。

(三)  ところで、申立人は、相手方恭媛の出生について、韓国在住の母季礼生に知らせてやつたところ、右母の指示に従い、申立人の妹、清君子が、これを申立人とその妻である相手方栄花との間に一九六三年(昭和三八年)七月二五日出生の嫡出子として虚偽の出生届をしたものである。

(四)  したがつて、相手方恭媛は、韓国にある申立人の戸籍に、同人と相手方栄花との間の嫡出子として登載されたが、真実は前記のとおり申立人と相手方恭媛特別代理人との間の非嫡出子で、相手方栄花と相手方恭媛との間には親子関係が存在しないので、その旨の審判を求めたく本申立てに及んだ。

というにある。

二、本件については、昭和四三年八月二二日の調停委員会の調停において、当事者間に主文と同旨の審判をうけることについて合意が成立し、その原因についても争いがないので、当裁判所は、本件記録添付の関係人らの戸籍謄本、外国人登録済証明書および申立人、相手方栄花ならびに相手方恭媛特別代理人に対する審問等によつて必要な事実を調査したところ、申立人の前記申立ての事由のとおりの事実が認められる。

三、ところで本件申立人および相手方栄花の国籍および相手方恭媛の表見的国籍はいずれも韓国であるからいわゆる渉外事件であるが、当事者らはいずれも永年日本に居住するものであるからわが国の裁判所に裁判権があり、しかも住所地たる当裁判所に管轄のあることは明らかである。

ついで本件の準拠法について考えると、本件は相手方両名間の表見上の親子関係の存否の確認を求めるものであつて、結局相手方栄花と相手方恭媛との間に実質的母子関係のないことを明らかにすること、つまり、この両名間に嫡出の親子関係のないこと、および事実上の非嫡出の親子関係もないことを明らかにするものであるから、嫡出親子関係の確定については法例第一七条によつて母の夫の本国法を適用し、非嫡出の事実上の親子関係の確定については法例に規定がないけれども子の出生当時の父または母の本国法を適用すべきものと解されるから、各当事者の本国法たる韓国法によるべき場合である。

韓国においては、わが国と同様親子関係の存在しないことの確認を求める手続が認められており、同国家事審判法による審判事項とされているから、相手方両名間の親子関係のないことは上記認定のとおりである以上、本件申立は韓国法によつても相当と認められる。

なお、親子関係不存在確認の手続については、法廷地法たるわが国の法律によるべく、家事審判法第二三条により、主文のとおり審判する。

(家事審判官 野田愛子)

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